なぜ日本の食料自給率は問題視されるのか?《食料自給率38%》の真実

食糧自給率38%の真実

現在国連では、「2022年は、かつてないほどの食料危機の時代である」として警鐘を鳴らしています。実に8億2800万人もの人がお腹を減らしたまま、毎晩眠りにつくといわれます。

この世界的な食料危機の原因は、何だと思われますか?

こう問われたとき、 新型コロナウイルス(COVID-19)によるもの」と答える人もいれば、「気候変動によるもの」「食料価格の高騰によるものと答える人もいるでしょう。

また、「ロシア・ウクライナ戦争による天然資源・小麦の高騰の影響である」とする人もいるかと思われます。原因はひとつではありませんが、そんな食料危機が懸念される時代において「食料自給率38%」の日本は大丈夫なのでしょうか。

この記事では、

  • 「食料自給率38%」の意味
  • もう一つの「食料自給率」とは?
  • 食料危機の時代において、私たちができること

について解説していきます。

目次

食料自給率38%!?仮に戦争になったら日本は困窮するのか

日本の食料自給率は、38%。これは農林水産省の出したデータであり、疑いようのない数字です。

そう聞くと、

「もし、戦争になったり、輸入ができなくなったりしたら、62%の日本人が飢えるということ?」

と不安に思う人もいるかもしれません。特に現在は世界情勢が不安定ですから、心配しますよね。

でも、安心してください。この「食料自給率」は、あくまで「カロリーベース」の考え方なのです。

食料自給率といっても、その意味は2つある

日本には

  • カロリーベース総合食料自給率
  • 生産額ベース総合食料自給率

2つの食料自給率の考え方があります。

「38%」とされているのは、①の「カロリーベース総合食料自給率」の方なのです。

このカロリーベース総合食料自給率とは

1人が1日に必要なカロリーのうち、国内生産の割合を示す数字はどれくらいか

を示す数字です。

つまり「1人あたり必要なカロリーは2265キロカロリーとしたとき、そのうちの38パーントを国内生産で賄っている」ということです。

もう一つの「食料自給率」でみると、60%超え!?

カロリーベースで見ると、青ざめてしまいますね。

でも「生産額ベース総合食料自給率」で見てみると、まったく違った印象になるでしょう。

生産額ベースの食料自給率とは

国民が得る食料の生産額のうち、何パーセントを国内生産の食料が占めているか

を示すものです。

「カロリーベース総合食料自給率」はエネルギー量の観点から、「生産額ベース食料自給率」は経済の観点から食料自給率をとらえている……と考えるとよいでしょう。

さて、生産額ベースで見たときの食料自給率は何パーセントになると思われますか?

答えは…63%です。

なぜこのような違いが起きるのか?

国産食料の生産額は63%なのに、エネルギーベースだと38%。不思議ですね。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

そのからくりは、「たとえ野菜がたくさん作られていたとしても、それはカロリーベース総合食料自給率を上げることには直結しにくい」というところにあります。

野菜は小麦などに比べてカロリーが著しく低いため、どれだけ多くの野菜が作られていたとしても「エネルギーベース」で見た場合は食料自給率の向上には貢献しません。

「肉」に関しても、国産の飼料を食べて育っている動物こそ少ないものの、自給率だけで言えば牛肉は35%、豚肉は49%・鶏肉は64%が国内生産となっています。他の畜産物としては、牛乳・乳製品は59%、鶏卵にいたっては96%という高い割り合いを示しています。

事実を正しく捉えれば、真の課題が見えてくる

カロリーベースで計算すると、砂糖や油、小麦類などハイカロリーな食材を輸入に頼っている日本の「食料自給率」はどうしても低い水準にとどまってしまいます。一方、生産額ベースでは、そうはなりません。そのため、日本の食料危機はそこまで深刻ではない、という人もいます。

しかし、安心はできません。地球の資源がまかなえる分岐点は80億人といわれますが、2022年11月、ついに80億人を超えたといわれます。

そして、意外と知られていないのですが、日本では野菜を実らせる《種子》の90%以上を海外から輸入しています。「食料自給率」は野菜の場合80%ですが、種子から肥料等まですべてが国産の野菜はわずか10%以下となります。また、家畜を育てる《飼料(えさ)》も80%近くを、輸入に頼っているのが現状です。

もし食糧危機や戦争等の有事によって、輸入がストップしてしまったら……しばらくは大丈夫かもしれませんが、その状態が続けばと考えると背筋が凍りますよね……。

食料危機の時代に、私たちができること

いずれにしても、輸入に頼った生活を送っていると日本の農業も畜産も衰退してしまいますし、「世界規模の食糧危機」を乗り切るためには一人ひとりの取り組みが重要になってくるのは事実です。

現在は、国もさまざまな呼びかけを行い、食料自給率のアップに努めていますが、私たちも

  • 正しい知識を身につける
  • 地産地消の考え方を持つ
  • 食品ロスを減らす
  • 和食中心の食事にする

などの取り組みを行うことが求められています。

日本の「食料自給率」について正しい知識を身につけると、普段の生活の中で自然と、そういった問題に取り組む働きに目がいくようになります。例えば、肥料の国産自給率の向上のため、生産者や企業が一体となって行う「自給肥料米」の取り組み等がありますが、消費者として買い物の際にそういった商品を選択することが取り組みの大きな支えとなるでしょう。地産地消の考え方はその地域の農業を支えるきっかけになるうえ、経済発展にも寄与できるものです。食品ロスを減らすことは食材を無駄にしないだけでなく、環境保護の点からも非常に有用です。ユネスコ無形文化遺産にも指定された「和食」は、食料自給率を上げることのみならず、健康な体を作るうえでも役立ちます。

「食料自給率に関する知識」に限った話ではなく、食料とそれに関する正しい知識を身につけることは、危機の時代を生きていくために必須のスタンスなのではないでしょうか。

― 出典 ―

農林水産省「食料自給率とは

WFP「世界的な食糧危機

農林水産省「その4:お肉の自給率

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この記事を書いた人

経営者、JSA認定シニアソムリエ。高級レストランの運営、マーケティング、人材育成を10年。その後、水産の仕事に携わることで、食の源流から、加工、流通、お客様の口に入るまで一連の食の在り方を学ぶ。持続可能で、自然と共生しながら人を幸せにする「食」を追求。現在、自社植物工場と、渓流魚養殖、レストランを計画中。ぞろ屋合同会社代表。

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