陸上養殖の対象になる魚種とは?実際に育てられている10種を紹介

陸上養殖の対象になる魚種とは?実際に育てられている10種を紹介

陸上養殖を始めようと思ったときに気になるのが、「どんな魚種を育てるか」ということですよね。

「やっぱり、対象になる魚種って限定されるのかな」などを考えて、陸上養殖に不安を抱いている方も多いかもしれません。

今回は、陸上養殖で実際に育てられている魚種や、陸上養殖を成功する方法について解説します。

目次

陸上養殖の対象になる魚種は多い!

実は、陸上養殖の対象になる魚種は多種多様です。

次章でご紹介しますが、サーモンやサバ、ヒラメやエビ、アワビなど、様々な魚介類を育てることができます。

実用化されてからまだ日の浅い陸上養殖ですが、数々の研究開発が行なわれていることで、着実に対象魚種を増やしているのです。

ただ、陸上養殖はある程度の生産コストが必要になるため、費用対効果を考えて高級魚を育てている事例をよく見かけます。

陸上養殖で育てられている魚種10選

陸上養殖では様々な魚種が育てられていますが、その中の一部をご紹介します。

  • サーモン
  • サバ
  • ヒラメ
  • トラフグ
  • チョウザメ
  • ウナギ
  • ハタ
  • エビ
  • アワビ
  • カキ

それぞれの魚種を育てている企業と関連付けてお話するので、参考にしてみてください。

サーモン

株式会社 FRDジャパンは、千葉県木更津市にてサーモンの陸上養殖をしています。

一年中サーモンに適した飼育環境を維持しているため、毎日旬の美味しさを冷凍することなく都内へ届けることが可能とか。

さらに、海や川から切り離された環境だからこそ、細菌感染を予防する必要がなく抗生剤不使用なのが特徴です。

サバ

フィッシュ・バイオテック株式会社は、完全陸上養殖でサバの飼育に成功しています。

サバは陸上養殖で生産するのが難しいといわれていますが、漁獲量の減少から危機感を感じ、サバ養殖に参入したそうです。

「アニサキスのいないサバをサステナブルな飼料で育て、天然の水資源を汚さない養殖を行う」をコンセプトに取り組み、2023年3月8日には一部の店舗でサバの限定販売を行いました。

ヒラメ

JR西日本グループは、鳥取県の県魚であるヒラメを新たな地域産品に育てるため、陸上養殖に着手しました。

自然ろ過された綺麗な海水を使って大事に育てているため、寄生虫がつきにくく、歯ごたえの良い美しい白身の美味しさを楽しめます。

JR西日本グループではヒラメ以外にも、サバやサーモン、カワハギなど、様々な魚種の陸上養殖を手掛けていますよ。

トラフグ

株式会社 小川水産は、長崎大学との共同研究の末、毒を持たないトラフグの陸上養殖に成功しています。

フグが毒を持つメカニズムはエサに要因があることを突き止め、良質でバランスのとれたオリジナルの飼料によって、誰もが安心して食べられるトラフグを提供しているのです。

卵・稚魚・成魚の他に、自社でつくる加工品も販売しており、要望に合わせて最適な商品を出荷しています。

チョウザメ

株式会社フジキンは、茨城県に3000平方メートルの広さを持つ養殖場を取得し、1万匹以上のチョウザメを飼育しています。

元来の生息地・ロシアに合わせて水質を管理し、ストレスを与えない陸上養殖に取り組んでおり、飼育時に排出される汚泥は対比として利用しているそう。

現在は、チョウザメの陸上養殖を利用して、野菜の水耕栽培を可能にしようと、研究を重ねています。

ウナギ

株式会社長崎陸上養殖 は、長崎県の澄んだ海水をかけ流しにし、天然に近い環境作りを意識しながら陸上養殖を行なっています。

生息環境に味が関係するウナギだからこそ、きれいな海水で育てていることから圧倒的臭みのなさを達成しました。

さらに、ミネラル豊富な海水によって旨味が強くなり、ウナギ本来の底力をダイレクトに感じられるそうです。

ハタ

琉球大学は、中城村養殖技術研究センターと共同開発を行い、陸上養殖にてヤイトハタを育てています。

排水をなるべく外部に出さず、浄化して循環させることにより、環境にも配慮した飼育を行なっており、余計な薬品は一切使わずに安心のヤイトハタを生み出しているのです。

飼育したヤイトハタは、サスティナブルシーフードECサイト「CRAFT FISH」内で、「美らハタの揚げ魚」として販売しています。

エビ

日本水産株式会社は、鹿児島県でバナメイエビの陸上養殖に取り組んでいます。

飼育水槽内の微生物集合体に水を処理させる方法で陸上養殖を行い、事業コストや環境負荷を低減させつつ、エビを生産しているとか。

海水を使用した陸上養殖をすることで、強い甘みと旨味をつくりだしており、全国に向けて数量販売も開始しています。

アワビ

北海道渡島管内福島町は、20年以上の試作を経て、アワビ陸上養殖の事業化に成功し、生産が軌道に乗り始めています。

クセが少なくて食べやすい味なうえ、同じサイズで通年提供できることから、今後もさらなる出荷を見込んでいるそう。

町内では、町おこしの切り札として、ご当地メニューや特産品の開発も進んでいます。

カキ

株式会社ゼネラル・オイスターは、世界初となるカキの完全陸上養殖に成功しました。

ウイルスや菌がいない水深200メートルより深い海洋深層水を使用し、プランクトンの大量培養も手掛けたことで、低コストのあたらないカキが完成したのです。

甘みが強く栄養価が高いのも魅力であり、エサによってカキの風味を変えられるという特徴もあります。

陸上養殖のメリット【対象魚種の多さだけじゃない】

「意外といろんな魚種を育てられるなら、陸上養殖を検討してみようかな」と思っている方も多いのではないでしょうか。

実は、陸上養殖は対象魚種が多いだけではなく、以下のように大きなメリットもあります。

  • 養殖する場所を選ばない
  • 海鮮汚染のリスクを防げる
  • 健康的な魚を育てられる

どんな場所でも始めることができるうえ、「閉鎖循環式」と呼ばれる方法なら使用した水を浄化して再利用するため、海鮮汚染のリスクを防ぐことが可能です。

加えて、外部の水を使用しない閉鎖循環式では、疫病にかからない魚も育てられます。

陸上養殖の詳細は以下の記事でお話しているので、取り組む前にぜひチェックしてみてください。

食糧危機対策に養殖?注目の「陸上養殖」についても解説

魚種の他に!陸上養殖で成功するには?

陸上養殖で成功するには、魚種を検討する以外にも以下4つのポイントを押さえるべきです。

  • コスト削減を検討する
  • 養殖ノウハウを確立する
  • 効率的な運営システムを作る
  • 「養殖した魚をいかに売るか」を考える

詳しくは、以下の記事でご紹介しているので、参考にしてみてください。

陸上養殖の成功事例・失敗事例。失敗させない4つの方法とは

まとめ

今回は、陸上養殖で実際に育てられている魚種や、陸上養殖を成功する方法について解説しました。

現在、数々の研究開発が行なわれていることで、陸上養殖で飼育できる魚種は増えています。

自社の目的を叶える魚種を選んで、陸上養殖を成功させましょう。

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この記事を書いた人

経営者、JSA認定シニアソムリエ。高級レストランの運営、マーケティング、人材育成を10年。その後、水産の仕事に携わることで、食の源流から、加工、流通、お客様の口に入るまで一連の食の在り方を学ぶ。持続可能で、自然と共生しながら人を幸せにする「食」を追求。現在、自社植物工場と、渓流魚養殖、レストランを計画中。ぞろ屋合同会社代表。

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