世界的に食糧危機が問題視されている中で、解決策として「フードテック」が話題になっていることをご存じでしょうか?
最先端のテクノロジーを駆使し、食に関する問題に取り組んでいくフードテックは、現在の厳しい経済環境だからこそ投資対象として関心が高まっています。
今回は、フードテックが急拡大している理由やフードテックの市場規模についてお話していきます。
さらに、フードテックの課題や事例もご紹介するので、参考にしてみてください。
フードテックとは
そもそもフードテック(FoodTech)とは、最先端のテクノロジーを駆使し、食に関する問題に取り組んでいく技術を意味します。
「Food」と「Technology」を合わせた言葉で表されており、導入が成功している例としては以下のようなものが挙げられるでしょう。
- 代替肉:大豆ミートなど人工的に作られた肉
- 新食材:コオロギで作られたお菓子など、今まで人が食べてこなかった食材
- ITロボット:料理の盛り付けなどを担当するロボット
食品の生産や開発はもちろん、調理や小売りまで様々な食の分野でフードテックのニーズが高まっているのです。
フードテックが急拡大中!その理由とは?
現在、フードテックが急拡大している理由は、主に以下の4つが挙げられます。
- 食糧危機が起きている
- フードロス問題が深刻化している
- 食習慣が多様化している
- 人材不足の解消になり得る
では、それぞれについて解説していきましょう。
食糧危機が起きている
フードテックに関心が高まっている最大の要因は、食糧危機が起きているから。
国連の「世界の食料安全保障と栄養の現状2022(SOFI)」報告書では、世界の飢餓人口は最大8億2800万人に達すると発表されています。
このように満足に食事をできていない現状にもかかわらず、国連の「世界人口推計2022年版」によると、世界人口は2058年に100億人まで上ると予想されているのです。
人口増によって食糧不足が懸念されている中、さらに地球温暖化などの環境問題が影響して、食糧危機への警戒が強まることに。
代替食糧やバイオ・ゲノム技術などのフードテックは、これらの食糧危機を解決する策として注目を集めています。
フードロス問題が深刻化している
日本を筆頭とした先進国でフードロス問題が深刻化しているのも、フードテック市場が急成長している要因です。
本来食べられるにもかかわらず捨てられている食品は、国内で年間523万トンといわれています。
廃棄された食品は可燃ごみとして処理されるため、運搬や焼却の際に二酸化炭素を排出し、地球温暖化を強めてしまうことに。
このフードロス問題に対策するべく、フードシェアアプリ「TABETE」では登録界隈の店舗で余ってしまった食品を掲載するなど、いくつもの企業がフードテックに取り組み始めています。
食習慣が多様化している
食習慣が多様化している現代に、フードテックを利用してユーザーのニーズを掴もうとする動きも見られるでしょう。
最近では、動物愛護の視点や環境問題の懸念からヴィーガンを実践する方が増えていますが、肉を食べなくても大豆ミートなどの代替肉で健康的な生活を獲得しています。
また、「毎日忙しいけどしっかり栄養はとりたい」「食欲はないけど何か食べておきたい」というニーズにこたえ、完全栄養食も開発されていますね。
食への新たなニーズが日々高まっているからこそ、フードテックを導入してターゲット層の心を掴めれば、新規事業の成功も期待できるでしょう。
人材不足の解消になり得る
フードテックは、食品業界において人材不足の解消にもなり得ます。
生産や加工、配膳など様々な分野で人材不足が懸念されている中、ITをはじめとする先端技術を利用した対策がいくつも行なわれているのです。
例えば、農家の知見を学んだAIによるサポートだったり、農地の情報をIoTで検知したりなどで、生産面での人材不足対策につながることも。
さらに、料理の盛り付けや配膳など、人の手で行わなくても問題のない単純作業に対応できるロボットも開発されており、食品業界の新たな救世主として話題になっています。
フードテックの市場規模
フードテック市場は今後上昇していく見込みです。
経済産業省の発表によると、世界のフードテック市場は、2020年の24兆円から2050年には279兆円まで拡大するとされています。
世界におけるフードテック分野の投資も年々増加しており、世界のフードテックスタートアップの時価総額は日本のトップ食品製造企業に迫ってきているのです。
海外では、ファストフード店を中心に代替肉が話題になっており、スタートアップや大企業が積極的に市場へと参入しています。
社会問題の解消や現代の食習慣に対応できるフードテックビジネスは、さらに拡大していくでしょう。
フードテックの課題
フードテックの課題としては、お金がかかることです。
例えば、日本で開発中の培養肉は培養液が非常に高価であり、商用化へ向けて取り組む必要があります。
もともと、オランダで初めて開発された培養肉は、ハンバーガーのパティ1個に3000万円以上かかっていたので、当時よりは抑えられているもののコストの削減は求められるでしょう。
また、陸地のプラントで魚を育てる陸上養殖も、環境を維持するための初期コストや運用コストの高さが懸念されています。
コストダウンの壁を乗り越えることで、新たなビジネスチャンスが見えてくるかもしれません。
食糧危機の解決策?フードテックの事例
最後に、実際に開発されているフードテックの事例についてご紹介します。
ミラクルミート
熊本県にあるDAIZ株式会社は、「味がいまいち」「食感が物足りない」など従来の大豆ミートが抱えた課題を解決した「ミネラルミート」を打ち出しています。
発芽のさせ方によって、鶏肉のような味や牛肉のような味など、お肉の種類を作り分けできているとか。
独自の技術によって完成させたミネラルミートは、ニチレイや伊藤ハム、フレッシュネスバーガーなど、様々な企業で使われています。
ロボットシステム
コネクテッドロボティクス株式会社では、食産業の人手不足や生産性向上のため、様々なロボットシステムの開発に取り組んでいます。
これまでに、たこ焼きロボットやソフトクリームロボットなど、いくつものシステムを開発しており、多くの実店舗や食品工場で使用されてきました。
2022年には、開発された惣菜盛付ロボットが中小・ベンチャー企業賞(中小企業庁長官賞)を受賞しています。
昆虫食
無印良品は、徳島大学と共同してコオロギのお菓子を開発しました。
昆虫の中でも、飼育が簡単で成長の早いコオロギに注目し、コオロギの粉末を入れたチョコとせんべいを販売しています。
豚肉・牛肉・鶏肉のたんぱく質が100gあたり約20gほどであるのに対し、コオロギは60gと約3倍の量を含んでおり、食糧危機への対策として注目を集めています。
まとめ
今回は、フードテックが急拡大している理由やフードテックの市場規模についてお話しました。
フードテックは、食糧危機やフードロスなど様々な社会問題を解決する対策として、関心を高めています。
市場規模も今後さらに拡大していくと予想できるので、新たなビジネスチャンスとして検討していきましょう。