培養肉とは?メリット・デメリットや植物肉との違いを解説

培養肉とは何か?

環境破壊の抑制や動物の犠牲を防げるなど、いくつものメリットで話題になっている培養肉。

2000年代から研究が本格化し、国内でも「食べられる培養肉」が開発されました。

そんな培養肉には、果たしてどのようなデメリットがあるのでしょうか?

今回は、培養肉とは何かということから、メリット・デメリットまで解説します。

目次

培養肉とは?

そもそも、培養肉とはどのようなものでしょうか?

培養肉の概要について詳しくお話していきます。

培養肉とは「動物の細胞から作る肉」

培養肉とは、牛や魚といった動物の細胞から作る肉のことです。

栄養成分が入った液体の中で細胞を培養して、大量に増殖させ、食肉を作り出します。

作るために多くの動物を育てる必要がないので、環境破壊を抑制できたり動物の犠牲を防げたりなどのメリットが考えられているのです。

 

環境や動物に負担をかけない肉という意味で、「クリーンミート」と呼ばれることもあります。

2000年代から研究が本格化した

培養肉は、2000年代から研究が本格化しました。

2013年には、オランダ・マーストリヒト大学のMark Post教授が、世界で初めて培養肉を使ったハンバーガーを完成させたのです。

ハンバーガー1つの値段は、研究費を含めて約3,000万円と驚きの費用になりましたが、輝かしい歴史となりました。

国内では、培養肉の課題ともいえる「ステーキ状のかたまり肉」を培養するべく、東京大学大学院の竹内昌治教授と大手食品メーカーが共同で研究を進めています。

研究グループは、2022年3月に国内で初めて食べられる培養肉を作り、「2025年までに100g程度の肉を作りたい」と決意を固めているのです。

また、培養肉は培養液などの材料費が高く、コスパも問題視されていますが、大量生産が実現できれば価格も下がると期待されています。

大阪大学では、本物の牛肉よりも美味しい培養肉を目指し、味の質を求める研究もされているのです。

培養肉と植物肉との違い

培養肉と混同されがちなのが「植物肉」です。

植物肉とは、大豆やこんにゃくなど植物由来の原料で作られている代替肉のこと。

培養肉と共に人工的に作られているものであり、現在はスーパーやコンビニ、ファストフードなど、様々なところで販売が進められています。

培養肉と植物肉との大きな違いは、本物の肉かどうかということ。

動物の細胞を培養して作る培養肉は本物の肉ですが、植物肉は植物性たんぱく質から作られるので本物の肉ではありません。

このように、本物の肉である培養肉が実験室で安定して作られるようになれば、次章でお話する4つのメリットが考えられます。

培養肉のメリット4つ

培養肉の持つメリットは以下の4つです。

  • 環境破壊を抑制できる
  • 動物の犠牲を防げる
  • 感染症の対策ができる
  • 食料危機問題の解決にもつながる

では、4つのメリットについて解説していきましょう。

環境破壊を抑制できる

培養肉が普及すれば、畜産業界で問題視されている環境破壊を抑制できます。

牛のゲップや家畜が出す糞尿にはメタンガスが含まれていますが、これには大きな温室効果があるといわれています。

環境省の公式HPによると、メタンガスは二酸化炭素の25倍の温室効果があるといわれており、地球温暖化に悪影響を与えているのです。

また、畜産は広い土地や大量の飼料、水も必要なので、放牧地などの資源を獲得するために自然破壊が行なわれることも。

培養肉ならたくさんの動物を飼育しなくても良いので、地球温暖化対策や資源の効率化が期待できます。

動物の犠牲を防げる

培養肉には、動物の犠牲を防げるというメリットもあります。

私たちが普段食べているお肉は、飼育された動物が殺されることによって並べられているものです。

それにもかかわらず、賞味期限切れなどの理由からたくさんのお肉が廃棄されているフードロスも問題になっています。

動物を犠牲にせず食用のお肉が用意できれば、倫理的にも葛藤することが無くなるでしょう。

感染症の対策ができる

培養肉が出回ることで、感染症の対策もすることができます。

動物を飼育していると、しっかりと対策をしていても感染症が発症してしまうことがあるものです。

このような感染症は、動物だけではなく人間に感染するケースもあり、大きなリスクを抱えながら運営していかなければいけません。

一方、培養肉は衛生的な場所で作られるため、抗生物質などを注射しなくても感染症のリスクを防げます。

食料危機問題の解決にもつながる

培養肉は、食糧危機問題の解決にも前進する食べ物です。

科学技術振興機構(JST)によると、世界の人口は2050年には97億人まで増加し、肉類の需要量は1.8倍、穀物の需要量は1.5倍まで増加するといわれています。

畜産業に直接関係する肉類はもちろん、家畜を育てるために必要な穀物の需要も増えてしまっては、近い将来食料が足りなくなることもあるかもしれません。

しかし、動物の細胞によって食用肉をつくる培養肉が成功すれば、需要に対する肉類を確保でき、たくさんの穀物を動物の飼料として消費することもなくなるでしょう。

培養肉のデメリット3つ

お話してきたようにたくさんのメリットがある培養肉ですが、以下のようなデメリットも考えられます。

  • 食品としての安全性を確立する必要がある
  • 畜産業界との共存を考えなければいけない
  • 消費者が受け入れられるような体制が求められる

では、培養肉における3つのデメリットについて解説していきましょう。

食品としての安全性を確立する必要がある

培養肉を普及させるには、食品として口にしても問題ないという安全性を確立する必要があります。

材料が細胞や培養液ということで「本当に人が食べても大丈夫なの?」と思う人もいるので、どんな人でも安心できるような仕組みが求められるでしょう。

また、食品表示についても培養肉がどのようなカテゴリーに入るのかは、まだ決まっていません。

培養肉の特性を押さえた表示方法が確立されれば、一般的なお肉と同じように安全性を疑わずに購入できるかもしれません。

畜産業界との共存を考えなければいけない

培養肉を販売するにあたって、畜産業界との共存も考慮しなければいけません。

様々なメリットのある培養肉ですが、広まりすぎてしまうと畜産業界に大きなダメージが生まれ、職を失う人が出てくることも。

全てのお肉が培養肉になることは考えづらいですが、畜産業界の損失が発生する可能性があることは無視できない状況ですね。

培養肉業界と畜産業界でお互いに意思疎通を図りながら、連携がとれるような関係性が求められます。

消費者が受け入れられるような体制が求められる

培養肉を一般的に販売する際は、消費者が受け入れられるような体制が求められるでしょう。

今まで、動物のお肉を食べてきた消費者からすれば、人工的に作られた培養肉はなかなか手を出しづらいものです。

日清食品ホールディングスが行なった調査では、「培養肉を食べてみたい」と答えた人が27%といった結果が出ています。

しかし、食料危機の解決につながることや動物愛護に貢献する可能性があることを伝えた後では、50%の人が「食べてみたい」と答えたのです。

このように、培養肉のメリットを事前に周知させるなどの工夫をすることで、消費者は受け入れやすくなるでしょう。

まとめ

今回は、培養肉とは何かということから、メリット・デメリットまで解説しました。

最後に、培養肉のメリット・デメリットを改めてチェックしてみましょう。

【培養肉のメリット】

  • 環境破壊を抑制できる
  • 動物の犠牲を防げる
  • 感染症の対策ができる
  • 食料危機問題の解決にもつながる

【培養肉のデメリット】

  • 食品としての安全性を確立する必要がある
  • 畜産業界との共存を考えなければいけない
  • 消費者が受け入れられるような体制が求められる

動物の細胞から作られる培養肉は、いくつかのデメリットはあるものの、それを上回る大きなメリットがあります。

世界的な課題を解決する可能性がある培養肉がスーパーに並べられる日を、心待ちにしてみましょう。

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

経営者、JSA認定シニアソムリエ。高級レストランの運営、マーケティング、人材育成を10年。その後、水産の仕事に携わることで、食の源流から、加工、流通、お客様の口に入るまで一連の食の在り方を学ぶ。持続可能で、自然と共生しながら人を幸せにする「食」を追求。現在、自社植物工場と、渓流魚養殖、レストランを計画中。ぞろ屋合同会社代表。

目次