経済ショックや気候危機などで引き起こっている食糧危機。
その対抗策として、「植物工場」が脚光を浴びていることをご存じでしょうか?
安定して汚染の心配が少ない作物を栽培できる植物工場は、新しい食料生産方法として期待が寄せられています。
今回は、食糧危機の救世主と噂される植物工場とは何か、メリットとデメリットからお話していきましょう。
食糧危機の救世主?植物工場とは
植物工場とは、屋内で人工的に管理し、植物の周年・計画生産が可能な施設のことです。
さらに、農林水産省によると、植物工場は栽培する方法によって以下の2種類に分類されます。
- 完全人工光型:閉鎖環境で太陽光を使わず、LEDなどの人工的な光で栽培する方法
- 太陽光利用型:温室などの半閉鎖環境で、太陽光を利用しながら栽培する方法
屋外で栽培される方法と異なり、植物工場には天候に左右されなかったり伝染病などのリスクを防げたりなどのメリットがあるため、食糧危機の救世主として話題になっているのです。
植物工場のメリット7つ
植物工場のメリットとしては、以下の7つが挙げられます。
- 天候に左右されない
- 計画的な栽培ができる
- 連作障害を避けられる
- 都市部でも栽培できる
- 高機能野菜を作れる
- 伝染病などのリスクを防げる
- 農業の知識が少なくても栽培できる
では、それぞれについてお話していきます。
天候に左右されない
温度や湿度などが完備された屋内で栽培するからこそ、天候に左右されないといったメリットがあります。
屋外で栽培する場合、どうしても猛暑や暖冬、台風や日照不足などの悪天候の影響を受けることも。
これにより、予定数よりも枯れてしまって思っているよりも収穫できないことが起こりがちですが、植物工場ならその心配はありません。
計画的な栽培ができる
植物工場内では、栽培に適した環境をしっかり管理できるため、計画的な生産が可能です。
季節に関係なく育てられるからこそ、受注状況や出荷計画に応じた栽培をすることができ、1年を通して明確にスケジュールを決められます。
安定的な栽培を実現できるからこそ、食糧危機の対策としてもうってつけでしょう。
連作障害を避けられる
通常、植物工場では土を使わずに作物を育てるので、「連作障害」を避けることができます。
連作障害とは、特定の作物を同じ場所で長年栽培することで、生育不良となってしまう障害。
原因は、土壌中における成分バランスの崩壊や病害虫の発生といわれていますが、植物工場では水耕栽培が行なわれているので、連作障害を防げます。
都市部でも栽培できる
農地がいらない植物工場は、都市部にも設立することが可能です。
都市部で作物を収穫することができれば、輸送コストも削減でき、食糧危機の原因である環境破壊にも対処できるでしょう。
野菜の鮮度も維持されるうえ、求人応募しやすい環境を作ることもできます。
高機能野菜を作れる
肥料などをしっかりと管理する植物工場だからこそ、もともとの栄養素を増大させた「高機能野菜」の栽培もできます。
ビタミンや鉄分が多く含まれているものなど、通常の栽培では実現しなかった野菜を収穫できるため、他社との差別化が図れることに。
現在は、身体に有害な成分を減らす試みも行なわれており、より需要にマッチした作物を栽培することが可能です。
伝染病のリスクを防げる
徹底した環境管理が行なわれている植物工場では、野菜における伝染病などのリスクも防げます。
病害虫によって枯れてしまう心配も少なくなるので、農薬の使用も一般的な栽培より減少させられるのです。
伝染病が原因で出荷量が少なくなる農家も珍しくないため、植物工場は食糧危機に対する救世主ともいえるでしょう。
農業の知識が少なくても栽培できる
植物工場では、農業の知識が少なくても栽培をすることができます。
従来の農業は、天候への対応などを感覚的に行うケースが多いですが、システムで管理する植物工場はマニュアル化することが可能です。
このため、農業の知識が少ないアルバイトなども雇うことができ、雇用支援にも有効であるといえるでしょう。
植物工場のデメリット3つ
植物工場を導入するうえで、メリットだけではなくデメリットも押さえておきたいですよね。
こちらでは、植物工場における以下3つのデメリットについてお話します。
- コストがかかる
- 売値が露地栽培より高い
- 技術は発展途上
デメリットを押さえながら、有効的に植物工場を運営していきましょう。
コストがかかる
植物工場を始めるには、どうしても初期費用やランニングコストがかかります。
初期費用としては、土地や建物、適した設備などが必要なため、数千万円になることも。
さらに、光熱費などのランニングコストも要しますが、食糧危機の救世主として脚光を浴びている分野であることを踏まえると、将来への投資と考えて取り組む企業も増えています。
売値が露地栽培より高い
初期費用やランニングコストなどがかかる植物工場は、作物の売値がどうしても露地栽培より高くなりがちです。
このため、売上を出すためには、単にスーパーなどに卸すだけでは難しいでしょう。
例えば、高機能野菜であることを全面に押し出し、付加価値をプラスして販売するなど、どのように販売するのが最適なのかを意識することが求められます。
技術は発展途上
植物工場の技術がまだ発展途上な面も、デメリットの1つでしょう。
レタスやハーブ類など、事業として栽培できる野菜がある一方で、トマトのような果実と葉の重なりが多いものはコストがよりかかってしまいます。
どんな作物を栽培するのがベストなのか、技術面も考慮して選ぶのが良いでしょう。
植物工場を導入している企業
最後に、植物工場を導入している企業を3つご紹介します。
成功事例を参考にしながら、自社への導入を検討してみてください。
株式会社健菜堂
株式会社健菜堂では、温泉熱やLED照明などを利用した完全人工光型植物工場でえごまの生産を行なっています。
太陽光発電といった地球環境に配慮したエネルギー源を使用しており、季節や天候に大きな影響を受けず1年中栽培をしているのです。
植物工場で生産されているえごまは、富山市の学校給食などで食べられています。
株式会社ベジ・ファクトリー
株式会社ベジ・ファクトリーは、植物工場の事業計画からアフターメンテナンスまで行なっている会社です。
高効率LED照明システムや大空間多段空調など、均一な栽培環境を構築するシステムを提供しています。
世界で唯一の結球レタス量産化が可能なシステムであり、国内から海外まで幅広く事業を展開中です。
株式会社センコースクールファーム鳥取
株式会社センコースクールファーム鳥取は、廃校になった校舎を利用して、完全閉鎖型人工光利用の植物工場を運営しています。
レタスやミニセロリ、おかひじきなど、9種類もの野菜を植物工場で栽培し、一定価格で販売しているのです。
他にも、室内菌床栽培やビニールハウスにて、キノコや小松菜なども栽培しています。
まとめ
今回は、食糧危機の救世主と噂される植物工場とは何か、メリットとデメリットからお話しました。
植物工場とは、屋内で人工的に管理し、植物の周年・計画生産が可能な施設であり、天候に左右されないなどのメリットから食糧危機への対策として注目されています。
導入を考えている方は、この記事でご紹介したデメリットも踏まえながら検討してみてください。