陸上施設を利用して魚介類の養殖を行う「陸上養殖」。
養殖する場所を選ばなかったり、健康的な魚を育てられたりなどの理由から、「陸上養殖にチャレンジしてみようかな」と思っている方も多いでしょう。
ただ、参入を検討するにあたって気になるのが、どうやったら成功するのかということ。
ということで、今回は陸上養殖の成功事例・失敗事例について詳しくご紹介します。
陸上養殖とは
陸上養殖とは、陸上に人工的に創設した環境のもとで行う魚介類の養殖です。
プールや貯水槽のような施設で実施することから、海面養殖に比べて場所を選ばずに始められずなどのメリットがあります。
陸上養殖については、以下の記事でメリット・デメリットを含めてお話しているので、ぜひチェックしてみてください。
陸上養殖の成功事例5つ
陸上養殖を検討するにあたって、まずは成功事例を知りたいですよね。
今回は、陸上養殖に取り組んでいる以下5社の事例をご紹介します。
- 株式会社アクアステージ
- 株式会社ゼネラル・オイスター
- 株式会社 いちい
- 関西電力株式会社
- 株式会社陸水
それぞれの事業内容を参考にしながら、どのように始めていくべきか構想していきましょう。
株式会社アクアステージ
株式会社アクアステージは、滋賀県の内陸部における完全な閉鎖環境にて、ヒラメの陸上養殖を行なっている企業です。
遠隔管理IoT技術を活かした最新技術を活用していることで、効率的な養殖環境を整備できており、同社が目指す「地域の活性化」に近付いています。
さらに、薬剤を一切使用せず、自然にやさしい独自の水質維持システムにより、天然に近いヒラメの養殖に成功しました。
株式会社ゼネラル・オイスター
株式会社ゼネラル・オイスターは、世界で初めてカキの完全陸上養殖に成功し、「あたらないカキ」を開発しました。
2006年のノロウイルス騒動により、お客さんの数が7割減になったことで始めたカキの陸上養殖。
人間に害のあるウイルスのいない海洋深層水を使うことで、安心して食べられるカキの養殖が実現しました。
本来、産地によって味の変わるカキですが、陸上養殖だからこそ味や風味の変化も叶えられるそうです。
株式会社 いちい
TBS NEWS DIGでは、株式会社 いちいが展開するスーパーマーケットチェーンが、ベニザケの陸上養殖に成功したことが公表されています。
高級食材のベニザケは、流通しているもののほとんどが輸入されたものですが、NTT東日本や岡山理科大学と協力して、脂がしっかりとのった美味しい魚を完成させたのです。
成功にあたっては、水槽に水質センサーやカメラを用いて成長を促す飼育を行ったり、病気になりにくい人工海水を使用したりなどが要因とされています。
関西電力株式会社
関西電力株式会社は、エビの陸上養殖で成功を収めています。
別のプロジェクトでエビの成長を促進できる細菌を発見したことから、社内リソースの活用を期待して取り組んだそう。
コロナ禍によって外食産業からの需要が低迷しましたが、エビの加工食品をECサイトで販売して大きな売上を叩き出しました。
株式会社陸水
株式会社陸水は、大阪府でトラフグとトラウトサーモンの陸上養殖を実施しています。
消費地に近いところで陸上養殖をしているため、輸送費を削減し、価格を押さえて販売しているのが特徴です。
陸上養殖だからこそ、必要なときに必要な分だけ新鮮な魚を届けられるので、過剰な在庫を抱えることや大量の魚を廃棄することがなく、ニーズに応えた事業展開を行なっています。
陸上養殖の失敗事例2つ
陸上養殖を軌道に乗せたいからこそ、成功事例だけではなく失敗事例もチェックしておきたいですよね。
こちらでは、以下2つの陸上養殖における失敗事例をご紹介します。
- WHA株式会社
- 株式会社貝援隊
それぞれの失敗事例を参考に、取り組んでみましょう。
WHA株式会社
livedoor Newsによると、陸上養殖マグロの研究事業を展開していたWHA株式会社が、2022年に破産したそうです。
2005年から手掛けていたものの、稚魚の死亡率が高かったり、成長に至るまでに長い歳月がかかったりなどから、本格的な商業化には至らなかったとか。
2019年9月期の売上はわずか100万円とされており、2019年頃には実質的な営業活動が停止されていました。
株式会社貝援隊
出雲市では、シジミの陸上養殖事業を進めていた株式会社貝援隊が破産したことを公表しています。
同社は、量産化に向けて努力してきたものの、研究費によって経営が難航していたそう。
コロナ禍によって、受注がさらに激減し経営困難に陥ったことで、破産に至りました。
陸上養殖を失敗させない!4つの方法
陸上養殖を始めたくても、失敗事例を見ると「やっぱりやめたほうがいいのかな…」と思ってしまいますよね。
ただ、陸上養殖には、養殖する場所を選ばないなどの大きなメリットがあるのも事実。
だからこそ、以下4つの方法を押さえて、陸上養殖を失敗させない事業展開を行っていきましょう。
- コスト削減を検討する
- 養殖ノウハウを確立する
- 効率的な運営システムを作る
- 「養殖した魚をいかに売るか」を考える
陸上養殖を始めるにあたって、押さえておくべき4つのポイントをご紹介します。
コスト削減を検討する
初期費用やランニングコストがかかる陸上養殖だからこそ、コスト削減を追求していきましょう。
例えば、独自のエサ開発や改良を行えば、日々のエサ代を削減することができます。
また、熱交換や自然エネルギーなどを利用すれば、ランニングコストの低減につながることも。
陸上養殖を始める環境も考えながら、低コストでの運用を検討してみてください。
養殖ノウハウを確立する
養殖ノウハウを確立させて、陸上養殖の生産性を安定させることも必要です。
高い生産性を実現するには、成長段階や環境に応じてエサのタイミングや量を調整したり、養殖池の水質にも気を配ったりなどが求められます。
常に水質を管理し、データに基づいた養殖ノウハウを確立することが、陸上養殖の成功に向けて欠かせません。
効率的な運営システムを作る
陸上養殖の効率的な運営システムを作ることで、無駄を省き生産性を高めるのも大切でしょう。
AIシステムを使ってエサやりを自動化するなど、手間や時間を省くことで事業のさらなる成長へ尽力することが可能です。
また、効率的な運営システムがあればスタッフの人数も少なくできるので、人件費の削減も期待できます。
「養殖した魚をいかに売るか」を考える
質の良い魚を育てるだけではなく、どのように販売するのかも考えておきたいポイントです。
そのまま販売するのではなく加工するなど、市場のニーズを調査し、消費者が求めている形で提供していきましょう。
料理人と手を組み、消費者に伝わりやすい形を構築するケースもあるので、自社で良いアイディアが浮かばない場合は検討してみても良いかもしれません。
まとめ
今回は、陸上養殖の成功事例・失敗事例について詳しくご紹介しました。
「あたらないカキ」など、陸上養殖を手掛けたことで大きな成功を収めている企業もいる一方で、破産に至ってしまったところもあります。 リスクを考えたうえで事前準備をしっかりと行い、自社の強みが出せるような陸上養殖事業を検討してみてください。